ナースが教える汗の臭い予防
今や体臭ケアは身だしなみエチケットとして欠かせないものになっています。
人との距離が近い満員電車やエレベーターの中、接客業、同じ空間で過ごすオフィスの中などなど・・・自分の体臭が気になってしまうシーンは多いですよね。
私も体を動かす上に、人との距離が近い職業柄、自分が臭っていないかヒヤヒヤしながら働いていました。
この記事では、汗をかく器官「汗腺」の仕組みを踏まえながらデオドラントケアについて解説していきます。
汗の臭いは、「汗腺を鍛える」ことで抑えられるほか、アロマを使ったデオドラントケアも活用できます。
アロマを使うと、自然な香りを楽しみながらケアできる上、周囲からの反応も良くなり、デオドラントケアが楽しくなりますよ。
体臭の原因は
体臭の原因は主に、体の表面にいる常在菌が汗や皮脂を分泌することで発生するガスです。
体臭は、人種や年代、食生活やストレス、そして汗を分泌する器官(汗腺)の働きによって左右されます。
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腋臭体質とは
強い体臭というと、まずは腋臭(ワキガ)について連想しますよね。
腋臭(ワキガ)とは、脇の臭いが強い状態のことを指し、病気ではなく体質です。
腋臭の原因となるのは、汗を分泌する器官である、アポクリン汗腺からの汗です。アポクリン汗腺の量は遺伝や人種によって決まっています。
腋臭体質は優勢遺伝であり、片方の親がこの体質であれば半分の確率で遺伝します。
人種による違いでは、黒人では100%、欧米人では70〜90%、日本人では10〜15%が腋臭体質だと言われています。日本人を含めた東アジア地域では腋臭体質は少ないです。
エクリン汗腺・アポクリン汗腺
汗を分泌して、体温調整を行っているのが、汗腺という器官です。
汗腺にはエクリン汗腺とアポクリン汗腺の2種類があります。
エクリン汗腺は全身に存在している汗腺で、主な特徴は以下のようなものです。
- サラッとしている
- 99%が水分
- スポーツなどで体を動かした時にかく「玉のような汗」はエクリン汗腺からのもの
ほとんどが水分で構成されており、水分以外の他の成分は塩分や尿素、アンモニア、イソ吉草酸などの脂肪酸です。これらがニオイの原因にもなりますが、濃度が低いので、汗自体はほとんど臭いません。
一方のアポクリン汗腺は、脇の下、陰部、肛門、乳輪、耳の中などの限られた部位に存在している汗腺で、特徴は以下のようなものです。
- 粘り気があり、乳白色〜乳黄色の汗が出る
- タンパク質、脂質、糖質、アンモニア、鉄分などの栄養成分が豊富
栄養成分が豊富ということは、それだけ常在菌が増えやすく、分解された成分の発酵臭がいわゆる「ワキガ臭」として臭いだすということです。
ちなみに耳垢が湿っている人はワキガ体質と言われていますが、これは耳の中のアポクリン腺の分泌が活発なためです。
- サラッとした汗(水分の多い汗)
- ほとんどが水で構成された汗
- 全身に分布
- 体温調節(体温を下げる)に関わっている
- 粘りけがある、乳白色〜乳黄色の汗(分泌物の多い濃い汗)
- タンパク質、脂質、糖質、アンモニア、鉄分などの栄養成分が豊富な汗
- 脇の下、陰部・肛門、乳輪、耳の中に分布
汗の匂いを抑えるには?
汗をかく習慣をつける
汗をたくさんかくのは余計に体臭が強くなるんじゃ?
いいえ!汗腺を鍛えることで汗臭さを改善することができます。大切なのは「かく汗の質」なのです!
実は、エクリン腺からかく汗そのものは無臭です。
「エクリン腺・アポクリン腺」でも説明したように、汗の中の栄養成分が常在菌を増やし、常在菌の代謝物がニオイの原因になっています。
汗は常在菌にとってのえさというわけです。
ここで、汗腺の機能について見ていきましょう。
汗は血液をろ過して作られています。このときナトリウムなどのミネラル成分なども汗と一緒に出されます。
しかし、ミネラルは体に必要なものなので、エクリン腺はこれらを再吸収して再び血液に戻し利用します。
・・・ここまでが正常な汗腺の働きです。
しかし!汗腺の機能は、加齢とともに低下していきます。
加齢以外にも、運動不足や、エアコンの効いた部屋ばかりにいるなど、体温調整をする必要がないとだんだんと「休眠モード」に入ってしまいます。
つまり、汗をかく習慣がないと、「休眠モード」になっている汗腺が増えていきます。
「休眠モード」の状態の汗腺は、再吸収の機能が低下して、汗の中にミネラルなどの栄養成分がそのまま排泄されやすくなっている状態です。
休眠モードの汗腺が多いと、ミネラル分が多く含まれたベタベタの汗になり、常在菌の栄養となることでニオイの強い汗になってしまうのです。
汗腺の再吸収機能を鍛える、つまり、汗腺を休眠モードから覚ますには、湯船に浸かる・運動をするなどで定期的に汗をかく習慣をつけることです。
定期的に汗をかくことで汗腺を休眠モードから覚ますだけでなく、毛穴に詰まった皮脂や汚れ(いずれも常在菌のエサやそれ自体が臭いのもと)を洗い流してくれるので、いいことずくめですね。
こまめに汗を拭く
汗を拭くって普通のことじゃん!
これ、地味に大事です。
「汗をかく習慣をつける」の項でもお伝えしたとおり、汗、とりわけ「ミネラル分を多く含む汗」は常在菌にとってのえさです。
汗の臭いを抑えるには、常在菌にえさを与えなければ良いわけです。
臭いの元となってしまう汗に含まれるミネラルや皮脂を拭き取り、常在菌が繁殖しないようにすることが地味だけれど効果的な体臭予防になります。
制汗アイテムの使いすぎには注意!
制汗アイテムには、毛穴を塞いで汗そのものの量を減らしたり、殺菌作用で常在菌の数を減らしたりするものがあります。
汗臭さを抑える便利なアイテムですが、使いすぎると汗のpHバランス(酸性・アルカリ性のバランス)が崩れて常在菌が増えやすくなってしまったり、殺菌しすぎでより強い菌が繁殖してしまったりしてしまい、結果的により匂いが強くなります。
いずれも使いすぎは厳禁です。
アロマで体臭ケア
制汗アイテムは年々売り場が拡大され、スプレータイプや直塗りタイプ、パウダーなど色々なタイプのアイテムがありますよね。
それだけ、臭いのセルフケアへの関心が高まっている証拠でもあります。
市販の制汗アイテムの匂いが苦手な方やもっとナチュラルな香りを楽しみたい方におすすめしたいのがアロマを使った臭い対策です。
市販のデオドラント商品は消臭効果が強力で心強いですが、香りがキツすぎたり好みではなかったりすることがありませんか?
私も香りがキツすぎないデオドラントアイテムについて色々と試していたところ、アロマを使ったデオドラントケアは周囲の人から好評だったのです。
アロマを使った体臭ケアは嬉しいメリットがたくさんあります。
- 香りが強すぎないので仕事の日やフォーマルなシーンでも使える
- ナチュラルな香りを楽しめる
- 精油の抗菌効果が期待できる
- 自分の好きな香りを見つけやすい
植物の香りには、リラックス・リフレッシュ効果などといった精神的作用があるので、体臭ケアもできてリラックス効果もある一石二鳥のデオドラントアイテムと言えるのです。
どこに売っているのか?
アロマを使ったデオドラント商品はアロマショップのほか、一部日用雑貨売り場、コスメストアでも取り扱いがあります。
一番のおすすめはやはりアロマショップでしょう。
なぜなら、ロールオンタイプ、パウダータイプ、スプレータイプなどの幅広いデオドラント商品が揃っているからです。
直接店に足を運ぶのが難しい場合は、オンラインストアで購入することができます。
自分の好きな香りで作ってみる
市販のアロマデオドラント商品はお手軽で便利ですが、自分の好きな香りのデオドラント商品を作るのも面白いですよ。
体臭予防ができるだけでなく、自分の好きな香りを嗅いで幸せな気分に浸ることができます。
いくつか精油を使ったデオドラントアイテムのレシピをご紹介します。
用意するもの
・好みの精油10滴
・無水エタノール10ml
・精製水40ml
作り方
容器に精油とエタノールを入れよく混ぜ合わせる。(はじめに精製水と混ぜると分離してしまうのでエタノールと先に混ぜること!)
❶と精製水をよく混ぜ合わせる。
臭いの気になる箇所にスプレーして使う。
用意するもの
・好みの精油3滴
・カオリン大さじ2
・コーンスターチ大さじ2
作り方
密封できるビニール袋にカオリンとコーンスターチを混ぜ、精油を加える。封をして振ってよく混ぜる。
茶漉しでふるい、パウダー容器にうつす。
パフなどにパウダーを少量ずつとり、汗が気になる部分にはたく。
デオドラントにおすすめの精油
以下の精油は抗菌作用が期待され、デオドラントにおすすめのものです。ただし、いずれも刺激性や光毒性(精油がついた部分を光に当てると皮膚発疹や発赤が出現する)がある場合があり、使用箇所や使用量に注意してください。
- レモン
- グレープフルーツ
- ティートリー
- サイプレス
- ベルガモット
- ユーカリ
- レモングラス
まとめ
今や自分の体臭ケアは当然のエチケットとして欠かせないものになっています。
汗の臭いケアは比較的すぐに取り組める体臭予防のひとつです。
汗の臭いを抑えるには、常在菌のエサになる皮脂や汗に含まれるミネラルを除去することが効果的です。
汗に含まれるミネラルを減らすためには、運動などで日常的に汗をかく習慣を身につけることで、汗腺の機能を鍛えることが大切です。
こまめに汗を拭いたり、正しいデオドラント製品の使用で汗の臭いを抑えることができます。
これからのデオドラントケアには、アロマ(精油)がおすすめです。精油を使うことで、強すぎない自然な香りを楽しみながらリラックス効果も得られます。
参考文献
佐々木薫(2019).『アロマテラピー図鑑』.主婦の友社.
川端一永、吉井友季子、横山信子1(2010).『医師がすすめる「アロマテラピー」決定版』.マキノ出版
和田文緒(2009).『アロマテラピーの教科書』.新星出版社